体外受精
体外受精胚移植について
卵巣から直接卵を取り出し(採卵)、特殊な培養液の中で一定濃度の精子を加え(媒精)、受精した卵(受精卵)を培養した後、子宮の中に戻す(胚移植)一連の治療を体外受精胚移植とよんでいます。
本来奥様の体内でおこる現象を体外で人工的におこなうこの治療をお受けになるのに不安や戸惑いをお持ちではないかとお察しします。
しかしながら体外受精胚移植は実施されてからすでに20年以上を経過し、現在では生まれてくる赤ちゃんの27人に1人(2012年)はこの方法により妊娠した赤ちゃんといわれています。
体外受精をお受けになられる方の適応
- 卵管因子
- 卵管の閉塞や卵管周囲の癒着が疑わしい場合。
- 男性因子
- 乏精子症や精子無力症など従来のタイミング法や人工受精では妊娠が難しい場合。
- 高齢
- 高齢のため通常の治療法では妊娠が難しい場合。
- 抗精子抗体陽性
- 抗精子抗体陽性によって人工授精でも妊娠が難しい場合。
- 原因不明
- 明らかな原因がないが、長年通常のタイミング法や人工授精を繰り返しても妊娠が難しい場合。
顕微授精について
顕微授精は、1980年後半から行われており、顕微鏡下でピペットと呼ばれる細いガラス管で精子を吸い、卵子に直接精子を注入し受精させるものです。
卵子の透明帯に穴を開けて精子が入りやすくする透明帯開孔術(PZD)や卵子の透明帯と細胞質の間に精子を注入する(SUZI)などがありますが、現在行われているほとんどが卵子の細胞質に直接精子を注入する細胞質内精子注入法(ICSI)とされています。
顕微授精の適応となる場合
- 精子の状態がよくない方
精子の数が少ない、精子濃度が低い、運動率が悪い、奇形率が高いなど精子側に受精を妨げる原因がある場合。 - 卵子そのものの問題が原因で通常の体外受精では受精しない場合。
体外受精で受精しなかった、受精率が低かった、抗精子抗体が陽性の場合など。 - 高齢や卵巣の反応があまりよくなく、卵子の数が少ない場合に受精率をあげるために行われる場合もあります。
今のところ顕微授精により生まれた赤ちゃんは年間数千人と言われており、臨床の現場では危険な方法ではないと考えられています。
しかし、顕微授精で生まれた赤ちゃんの異常に関しては十分なデータがまだありません。自然な妊娠に比べて赤ちゃんの異常の確率が若干高くなるという報告もあります。
しかしながらこれは卵に針を刺したりする行為が原因なのか、もともと顕微授精の適応となるご夫婦が異常の因子をお持ちになっているせいなのか定かではありません。
重症の乏精子症や無精子症の方の中にはもともと染色体や造精機能関連遺伝子の異常がある場合があり、そのような方の精子を用いることで染色体や遺伝子の異常が赤ちゃんに受け継がれてしまう可能性があるといわれています。
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